ひねくれ双子の険しい恋路




「…………悪かったわ」



すごーく小さな声でボソッとつぶやくようにして言ったエリカ。

結局梨沙にもあたしにも目をあわせなかった。


でもそれは見分けがつかないから、

という理由だけではなくて

人の目を見て謝れない、


ってところもありそう。


……プライド高いんだな。



「梨沙、もう昼いいか?」


「え、うん。終わってるけど」


「じゃあ行こう」


「え?」


朝日は梨沙の腕を引いて教室から出て行った。


やっぱりクラスの人間は、梨沙達に興味を示さないわけにはいかないらしい。



「なによ、もう。朝日のくせに」


小声で文句を言うエリカを無視して、一夜は机の上に置いてあった飲みかけのリンゴジュースを全部飲んだ。

ズズー、とストローの音が鳴って「なんだ少ねぇな」とつぶやいて。



だからあたしも、昼ご飯を食べる前に購買で買ったクッキーの最後の1枚を食べた。




……………。




昔からそうなんだけど、クッキーを食べた後は何かしら飲み物を飲みたくなるあたし。


わかってるから、ちゃんとジュースも買ってきた……。



『ねぇ、ちょっと一夜』


「なんだよ」



そのジュースが行方不明だったら、疑うべきは目の前のコイツだと思う。






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