ひねくれ双子の険しい恋路


『リンゴジュース買ってきてよ』


「残念もう売り切れ」


『はぁ?』


「俺の前に並んでたやつが買ったのが最後だった」



……なんか疲れた。

なんで一夜ってそんなに自分勝手なんだろう。


あたしは黙って一夜を見てた。

オレンジジュースを飲む一夜を、黙って、じーっと。



…………。



「あー、わかったよ。だからそんなに見てくんな」


一夜が折れた。

あたしはニコッと笑って、


『ほら、早く買ってきて。今すぐ。ダッシュで』


と急かした。


今度は一夜が不機嫌な顔になって、

「リンゴジュースはもともと少ねぇんだよ」

と文句を言った。


だけどそんな文句あたしきいてあげないから。

ということで無視した。


「だからこれで我慢しろ」


と言った一夜の言葉と同時に、ストローを口に突っ込まれた。


びっくりしたけど、反射的に吸ったから口の中にはオレンジの味が広がる。



「オレンジだってうまいだろ」


一夜が優しく笑うから、あたしはこくっと頷いた。


だけど、まわりがざわざわし始めて気付く。



あたし、一夜にジュース飲まされてる状態。


それに自覚したら急に恥ずかしくなってきて、体温がガーっと上がった。


で、思わずストローから口を離した。



「ねぇちょっと」



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