ひねくれ双子の険しい恋路


『というか、あたしをフルネームで呼んだ?』


それが気になる。


夢の中で聞こえたやわらかい声は宮木さんだ。

きっと何度も呼びながら起こしてくれたのだと思う。



「あ、はい。呼びました」


『……なんであたしが“砂希”だってわかった?』


なぜあたしを起こしたのかも不思議。



「この席、砂希さんですよね?」


『梨沙と入れ替わってる可能性だってあるでしょ』


「あ……。か、考えていませんでした!!」


この人、ものすごいストレート。

敬語だけど思ってることはポンと言ってのける人だ。




「でも、この席は、砂希さんの席です……」




何気ないその一言が、あたしの頭に深く入り込んだ。


ここは、あたしの席。



『……で、なんで起こしてくれたの。普通無視でしょ』


「無視なんてできません!!次の授業で砂希さんが怒られてしまいます』


うーん、それは明確。


そして、宮木さんは「神谷さん」から「砂希さん」に変えている。

会話の内容から、気を遣ったのだろうか。



「……というのは建前で、謝りたかったんです」


『……謝る?何を』


あたしはカバンの中から化学の教科書とノートを取り出しながら言った。






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