ひねくれ双子の険しい恋路


「前に廊下で私を助けていただいた時に、お礼をするためにお二人を追いかけました」



確かに、あったなそんなこと。

でもばらまいたノートを梨沙が拾い集めてあげただけ。


そんなことでも、この子には大きなことだったのかもしれない。



「追いついて声をかけた時、その…お二人を見分けられなくて…。

砂希さんに“あなたを助けたのはこっちだよ”と言っていただいて、自分のしたことに酷く恥ずかしくなりました……」


『……なんで?』


その時なにかされたっけ。

謝られるほど、酷いこと?


「だって、私お二人を見分けられなかったんですよ!?

助けていただいた梨沙さんに失礼でしたし、それを言わせてしまった砂希さんにも……。

それをどうしても謝りたくって、でも声をかける勇気がなかなかでなくて……」



宮木さんは、涙目だった。



……キレイな、心。

あの日からずっと、見分けられなかったことを後悔してくれてたのかな。



こんな人が、いたんだな……。



『……ありがとう』



小さな声しかでなかった。


ポッと出てきたこの言葉の意味はわからない。

けど、言いたくなった。



「……砂希さんは、優しい方ですね」


意外な言葉に驚いて宮木さんを見ると、ポロっと涙を一粒こぼした。


「こんな私に、どうしてそんな言葉をかけてくれるのでしょうか……」



――キレイな、キレイな人。


こんな人が、たくさんいたら…。

なんて、ありえないけど。



でも、眩しい。

キレイな人が近くに居ると、自分の汚さがよくわかる。


一夜にべったりのエリカにイライラして、

梨沙と麻弥が仲良くなっていくたびに不安になって、

朝日と幸せそうな梨沙が羨ましくて、結局梨沙に当たった。




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