ひねくれ双子の険しい恋路


『……わかったから、行きなよ。もうすぐ始まる』


あたしはそれを言い訳に宮木さんから目を逸らした。



「はい。後で梨沙さんにもきちんと謝ります」


宮木さんは一粒こぼれた涙をぬぐって、ペコっとお辞儀してから移動の準備をした。


教室に残っていた女子たちも移動し始める。


あたしも、行くか……。


授業受ける気になんてなれないけど。


『?』


気付くと、前の出入り口に女子数人がかたまっていた。

というかこれじゃあ出れないんですけど。


どうして女子って群れを作るんだろう。

面倒くさいこと極まりない。


でも授業にいくためにそこを強行突破しようと自分の席から一歩離れた時、


「あの……すみません。通していただけませんか」


か細い声が聞こえた。


4~5人の女子は一気にその声の方を見た。


「え、あー宮木さんかー。小さくてよく聞こえなかったー」

「見えなかった、の間違いじゃない?」


キャハハっと耳障りな声で笑い始める集団。


「……すみません」


もう一方の宮木さんの声はどんどん小さくなっていく。



「その男子ウケ狙ってます!ってカンジの声とかしゃべり方とかマジでウザいんだけどー」

語尾を伸ばした変な話し方の女子が、長い髪をくるくると指に絡めながら言った。


「だよねー。誰も聞いてねーし。自意識過剰?」


それでまた笑いが起こる。

宮木さんは、「すみません……」と小さな声で言っているだけだった。






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