ひねくれ双子の険しい恋路
――パン。
あたしは持っていた化学の教科書で宮木さんの頭を軽くたたいた。
そういえば、宮木さんも身長小さかったな……。
「さ、砂希さん?」
『悪いことしてないのに謝るのはおかしい』
「……何?」
女子の目線はあたしに向けられた。
そうとうご機嫌斜めなご様子で。
『自意識過剰はそっちじゃない?別にあんたらに用なんてない。ほら退いて」
「はぁ!?」
「あたしらだってお前になんか用事ねーよ!!」
『じゃあ退けば?』
あたしの言うことを素直に聞きたくないという意地があるのか、誰も一歩も動かない。
「はは、アンタってやっぱり誰かに助けてもらわないといけない弱虫だったんだね」
そのうちの1人がまた宮木さんの話に戻す。
宮木さんは俯いたまま。
面倒くさい。
こんなところに長居したいわけじゃない。
『ねえ、名前は?』
あたしは教科書を持ちながら両手で宮木さんの顔を上げた。
「宮木…真奈美です…」
小さな声で、教えてくれた。
『そう。じゃあ真奈美、早く授業行くよ』
あたしは真奈美の手を引いて、女子集団の間を無理矢理通った。
『真奈美がキレイだから嫉妬したんでしょ?醜いよー』
廊下を歩きだしながら語尾を伸ばす話し方を少し真似てみた。
「なっ!!」
『これ以上この子に関わるな』
また言い返されるのが面倒で、その前に睨みつけながら言った。