ひねくれ双子の険しい恋路



「図書室で昼寝」



……素直、というかストレートすぎる。


なんだかそれが久しぶりで、おもしろくて、少し笑った。


「お前は何なんだよ」


『……散歩』


特に理由もないけどね。


「何だそれ」


一夜も少し笑った。



――胸の奥が、きゅうっとした。



だからあたしは、慌てて下を向いた。



「どーしたんだよ」

『いや、なんでもない』




「……大丈夫か」


顔を上げると、一夜はあたしの目の前に立っていた。

さっきはまだ階段に居なかったっけ。


『何が?』




なんで。

なんでかな。


“大丈夫か”


その一言が、どうしようもなく心に響く。



「……ならいーけど」



――ポン、ポン。


一夜の手が、あたしの頭に触れる。

そのまま、さっきあたしが上ってきた階段を降りていく。


なんで、いつもこういう時に……



―――“いつも”?



―――“こういう時に”?




バッと一夜の降りて行った方を振り返った。

けど、一夜はもういなかった。




……あぁ、わかった。


『―――わかったよ』


あたしは、一夜に触れられた自分の頭に手を置いてみた。



一夜があたしの頭をポン、ポンってするのはあたしが――……。







なぜか、無性に泣きたくなった。


今から一夜を追いかけて、手を握ってほしい。泣かせてほしい。









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