ひねくれ双子の険しい恋路



『違う。あたし、何も知らないんじゃない』



まだ知り合ってから1年たってないけど。

知らないことのほうが多いかもしれないけど。



――何も知らない、わけないんだ



『鶏肉の唐揚げ食べてた。りんごジュースも好きみたいだった。
……静夜との仲だって前みたいなどろどろじゃない』


それから、無愛想で、少し優しくて、結構鋭くて。

けど子供っぽいところあって。


実は、笑うと小さなえくぼができるの、知ってる。




……こんなにたくさん出てくるのに、どうして“ムダ”って言われなきゃいけないの。



『ムダ、なんて誰が決めた?まだ決まってないのに、決めるのは一夜なのに』



悔しい、言われっぱなしなんて。



『……じゃあアンタの気持ちは、ムダじゃないって言えるの?』



あたしはエリカの目を見た。


エリカが小さくて、見下ろすようなかんじになってしまったけどそんなつもりじゃない。




あたしたちは対等なはずでしょ。



昔を知らないけど、今を知っているあたし。


昔を知っているけど、今を知らないエリカ。




どっちの気持ちにもムダなんてないでしょ。





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