ひねくれ双子の険しい恋路



――パシッ。


あたしの右手が、一夜の左手首をつかむ。



『……行かないで』



なんて言うか考えてなくて、咄嗟にでた一言だった。



一夜は、振り向いた。


その表情は、少し驚いてる。

あたしを、じっと見てる。



『置いて、いかないで』



そう呟いたあたしは、一夜の目線に耐えられなくなって左腕で顔を覆った。



「どうした」



一夜がいつもの言葉をいいながら、一度立った椅子にもう一度座るのがわかった。



ちょっとだけ、安心した。

手を振り払われなくてよかった。




『……1人は、やだ』


どうやって伝えればいいのかわからない。


けど、今までに言ったことのない本音だあることは確かで。



「……ここにいるだろ」



頭の中がぐちゃぐちゃで、何を言うのか考えていたから、一夜の声が上手く聞き取れなかった。



『梨沙には朝日や麻弥がいて、一夜にはエリカがいて……』



どうしたってあたしが邪魔者で。




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