ひねくれ双子の険しい恋路



『どうして、そんなこと言うの!?そんな人間じゃないのに。

……甘やかさないでよ』



いつもいつも欲しい時に欲しい言葉をくれる。


そうやって、甘やかされたらもっとダメになりそうで……。



「砂希だからだ」


久しぶりにその声で名前を呼ばれた。




――でも。


自惚れるな。

あたしだから、なんて。


ものすごくそっくりな双子が珍しかっただけだ。


ただの好奇心。


神谷砂希、に興味があったわけでもない。



『違う、でしょ。同じ顔したのが2人もいるんだから』


梨沙だってこともあり得た。


ただ、今ここにいるのはあたしで。

一夜と会話したのが少し多いのが梨沙ではなく砂希で。


たまたま、なんだよ。


“あたし自身”じゃないんだよ。




「……俺は、」


一夜は、あたしの目だけを見て口を開いた。





「好きな女を見分けられないような男に、成り下がったつもりはない」







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