ひねくれ双子の険しい恋路
「砂希ちゃんはもうしょうがないとして、お前はしっかりしろ」
……静夜ってこんな人だっけ。
けなしてるよね、あたしのこと。
さらっと言う静夜に、怒る気も失せてきた。
「何がだよ」
「俺が引いたんだ、きちっとしてもらわないと困る」
……ダメだ、さっきから何が言いたいのかさっぱり理解できない。
「……?」
一夜は、分かったような分かってないような微妙な表情。
「だから、―――――――」
静夜の最後の言葉が聞き取れなかったのは、静夜が一夜だけに小さな声で言ったから。
あたしと静夜の距離はそう遠くはないけど、コソコソっとした声はさすがに聞こえなかった。
「俺だったら、ちゃんと言うんだけどなー」
「もともと言う気だ」
「じゃあ早く言えよ」
「じゃあ早く消えろよ」
え、っと。
一夜が理解したようなのはいい。
でも静夜に“消えろ”は禁句なんじゃないの……。
一夜の消えろっていうのは多分出て行けってことだとは思うけど。
「そんなに恥ずかしがり屋さんだったなんて知らなかったよ」
「ふざけんなそんなんじゃねぇ」
少し意外。
静夜は意味を分かっているのか、言われたことを気に留めてもいないようだった。
2人の兄弟の時間が、これから戻ってくるんだと思った。
静夜もきっと、本当は前から――。