ひねくれ双子の険しい恋路


『うん……まぁ』


あたしが曖昧な返事をすると、梨沙は表情を歪ませた。


「砂希だっていろいろ考えてたのに……ごめん。あたしばっかり言いたいこと言って……」


『ううん、平気』


「平気、じゃない」


梨沙があたしの言葉を否定する。

どうして?



「砂希はいつもそうやって自己完結する。勝手に決め付けて、引かない。」


悲しそうに、あたしを見た。


自己完結、って。

ただ自分で区切りをつけてるだけのことでしょ?

そんな悲しい顔させるようなことじゃないよね?



「表情隠すのうまいから、砂希が平気じゃないときに気付けない。助けてほしいときに助けられない。

生まれてから今まで、どれくらいそんなことがあったんだろうって思うと……」



梨沙の目にまた涙が浮かびあがる。

そして、ゆっくり頬をつたってこぼれおちる。


『ちょ、っと梨沙。何でそんなに思い詰めてるの?』


こっちが焦るよ梨沙。

やめて、あたしのことで泣くなんて。

そんな大人な人間じゃないんだよ、あたし。



「今まであたしのわがままを、我慢してきたんだって気付いたの。どうしよう、あたし……」



『梨沙、ホントに落ち着いて。

あのね、たとえ梨沙のわがままや面倒があったとしても、その分梨沙の存在に助けてもらったことがあるから』


「……」


梨沙はイマイチ納得してない様子。

そんなに自分を追い込んだって、苦しいだけだよ。

いつもあたしの前でニコニコしてた梨沙に、助けられてきたのに。



『あたしの言うこと、信じてくれないの?』


嘘ばっかりついたあたしのこの口で、そんなこと言うのは罰が当たる?



「砂希のこと、信じたい。けど……」



『……じゃあさ。一つだけ…教えてくれない?』



それだけの言葉にひどく緊張して、声が震えたんじゃないかと思った。






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