ひねくれ双子の険しい恋路



「さてじゃあ、その子呼んできてもらおうかな」

『え、』


「なぁに?」

『……何でもないです』



先生はあんまり怒らせてはいけないタイプだと気付く。


「一夜くん、もう戻ってきてるね?呼んで来てもらえる?」


先生が扉に向かって話しかけるから驚いた。


ガラッと扉を開けて入ってきたのは、確かに一夜だった。


「いいですけど……誰ですか」

『砂希ちゃんが知ってる人なら一夜くんとも顔見知りかなーなんて思って』


一夜の目線があたしに切り替わった。


誰だよ、そう言ってる。

その目からは怒りも感じとれる。

何でそんなに機嫌悪いの。



「――――エリカ」


あたしがつぶやいた直後、一夜は一瞬目を見開いてからすぐに保健室を出て行った。



「巻き髪の転校生ちゃんね」

『はい』


先生は全校生徒の名前と顔を覚えているんですか――

その疑問をぶつける前に、


「砂希ちゃんは寝てるふりしててね。口出ししちゃダメよ」

『……はい』


先生の言葉に流された。



「うーん。梨沙ちゃんもちょっと外してほしいかなぁ」


「……わかりました。じゃあ砂希の分も帰る支度してくるね」

『うん、ありがと』


梨沙はほんの少し名残惜しそうな表情で保健室から出て行った。



「ホントに寝てくれてもいいけど」


先生が笑いながら布団をかけてくれた。




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