ひねくれ双子の険しい恋路



「なんで、私を呼んだんですか」

「そうそう。あなたにね、聞きたいことがあるの」



――きた。

これが本題だ。


「麻生さん、でいいわよね?」

「ええ。麻生エリカです」



「じゃあエリカちゃん。神谷砂希さんを、ご存知かしら」



直球だな、先生。

それでも、たぶん笑顔なんだろうと思う。

今日初めて関わったばかりの先生は、ほとんどが笑顔だった。

真意の読めない先生。



「知って、いますよ。私のクラスにいる双子の片方」

エリカの話口調が、一瞬崩れた。

「それが、どうかしたんてすか」

けどすくにもと直した。


……さすがエリカ、とでも言おうか。



「実はね、階段の一番上から落ちてしまったのよ」


「……そうなんですか。それでどうして私?」


……話し方に変化はないエリカ。

何を、思っているんだろう。



「あら、まだわからない?砂希ちゃんが怪我したことに関係があると思ったから呼んだのよ」



先生の言葉で、空気が固まった。

見えないけど、エリカの表情も変わったんじゃないかと思った。


「エリカちゃんを見た人がいてね」


いない、ですよね。


「……知りません、そんなの」

「……わかったわ。確かに見ただけじゃ、ね」


先生の雰囲気も、変わってきた。


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