ひねくれ双子の険しい恋路




「砂希ちゃんは、目を覚まさないわ」


え?


「意識がないからどこを打ったか聞けないの。でも、目を覚まさないから」


なんか話がかなり大きくなって……。



「さっき救急車を、呼んだわ。もう10分もすれば来る」



『(せ、んせい)』


何、じゃあ一夜に「ついててあげて」って言ったところからこんな芝居が始まってたの?

それを一夜も知ってた?


わけがわからずに布団を退けて一夜を見ると、今度は真剣な顔でエリカのいる方向のカーテンを見ていた。


だから仕方なくあたしも目を閉じた。

もう流れに身を任せるしかできない。



「……え。あ、の人が?」


「そうよ。それでもわからない、って言える?」

「……」


「あなたが、砂希ちゃんを?」



「だって!!」


エリカが初めて声を荒げた。


「あの人が悪いのよ!!近づいてきたから少し押しただけ。そ、そしたら勝手に」

「少し押しただけなら、砂希ちゃんのことだから一番下まで落ちることはないでしょうね」


「わた、しのせいじゃない!!」


気が強くてお嬢様気質のエリカ。

こんな状況に陥っても自分の非は認めない。


「エリカちゃん。あまりこういうことは言いたくないけど」


先生はエリカが取り乱しても、至って冷静だった。

でも、その声はどこか怖くて。



「砂希ちゃんに何かあれば、悲しむ人はたくさんいる。砂希ちゃんの家族、友達、当然そこにいる一夜くんもよ。そして、悲しみが恨みになってあなたにむかう。

――一生、背負うことになるのよ」



重い、重い言葉だった。


エリカにも、あたしにも。




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