ひねくれ双子の険しい恋路
しばらくの、静寂。
それは、意外な一言で敗れた。
「ごめん、なさい……」
ぐすぐす、と鼻をすする音も聞こえてきた。
「謝って済まないこともあるって、例え悪意がなくても自分のしたことがどれだけ重かったかを、忘れないこと」
「ごめんなさい……」
先生の声色が戻りつつあるけど、エリカは酷くなりつつある。
「私じゃ、ないわよね。謝る相手は」
先生がそう言ってから、人の気配が近づいてきた。
そのまま、一夜の時と同じようにカーテンが開いた。
「ごめんなさい、ごめ、なさい……」
泣きながら謝るエリカに、目を閉じたままのあたし。
『もう、いいよ』
気の強くてプライドの高そうなあのエリカが、こんな風に謝ってる。
敵視していた、あたしに対して。
『大丈夫だから』
そんなエリカに、何も言わずにはいられなかった。
「砂希ちゃんが喋ったなら、仕方ないか」
先生は、ふぅ、とため息をこぼしてからこっちにやってきた。
「本当は救急車は呼んでないの。砂希ちゃんの意識もある。頭は打ってないようだけど、病院に連れていくのは本当よ」
エリカは少し固まったけど、あたしが思うほど驚かなかった。
それよりも、あたし達の芝居まがいに激怒すると思っていたあたしの方が驚いた。
「エリカちゃんに、反省してほしかったから。だから少し嘘をついたの」
その言葉を聞いたエリカは、かくんとひざを折って床に座り込んだ。
「生きてて、よかった」
それで、わかった。
本当は、追い詰めてたんだろうなって。
自分でも、何をしてしまったかわかっていたんだと思う。
それでも、きっとあの性格だからなかなか認められなかったのだろう。
それからエリカはひたすら謝りながら泣きじゃくって、落ち着くまでに時間がかかった。
それは、梨沙よりも長かったかもしれない。