ひねくれ双子の険しい恋路


「あ、もしかして前に梨沙たちとバスケしてた?」

『あ……うん、渡辺麻弥です』


「え、あぁ!渡辺さん!?ごめん、同じ中学だったのに」


……覚えて、いてくれた?


『1-Aで西中学から来たのは、福田くんと麻生くんとあたしだけだよ』

「そうそう、知ってはいたんだけど。何か変わった?」

『3年の時だけクラス違ったからじゃない?』


嬉しい。

こんなに話せてる。

覚えていてくれただけでも嬉しかったけど。

中学が一緒だった特権は、いいものだね。


でも、そうじゃなくて。


――お願い。

揺らがないで。



「ごめんな、気付かなくて。ホントごめん」

『あ、いや、そんなに気にしないで』

「じゃあ改めてまたよろしくー」


『……こちらこそ!』


いっそのこと、嫌ってくれた方が楽だった。

その優しさが、なかったら。


すぐ諦めることができたのに。


「他の同中どこのクラス言ったのかいまだに詳しく知らないんだよね俺」

『でも受けた人も受かった人も少ないから、E組とF組に1人ずつだよ』

「へぇ。よく知ってんな」

『片方友達なんだ』


こういうの、いいなぁ。

同じ中学だったからできる話もたくさんある。

むしろ、あたしにしかできない。


――なんて思うから、いつまでも未練が消えない。


でも、気分のいいあたしは楽しければいいやって、心のどこかで許してる。




< 375 / 392 >

この作品をシェア

pagetop