ひねくれ双子の険しい恋路


「それであの時さぁー……」

『そういえばあったね、そんなこと!』


中学の時、2年間同じクラスでここまで話すようになったのに。

どうしてあたしはそれで安心してたんだろう。



「……あ」


あたしと福田くんとの話に少し間が空いたとき、梨沙が声をだした。


そういえば、ここは梨沙の席だ。

話に夢中で、すっかり忘れてた。


「日曜日、大丈夫だった?」

梨沙は本から福田くんに視線を移した。

「おお。大丈夫。天気も良いらしい」

「やった。じゃあ行けるね」


……なんの、話だろう。




「日曜日の遊園地なんだから、混むこと覚えとけよ」


「うん」



あぁ、そっか。


そうだったじゃん。


「じゃ、俺戻るわ」

「またあとでね」



ここは、高校。


所詮“同じ中学”ってだけ。

“幼馴染みの彼女”にそんなもの敵うわけなかった。



――あたしは静かに教室を出る。


足音も立てずに、誰も人のいないところへ。


どこだったら、一人になれるかな。




< 376 / 392 >

この作品をシェア

pagetop