ひねくれ双子の険しい恋路
「それであの時さぁー……」
『そういえばあったね、そんなこと!』
中学の時、2年間同じクラスでここまで話すようになったのに。
どうしてあたしはそれで安心してたんだろう。
「……あ」
あたしと福田くんとの話に少し間が空いたとき、梨沙が声をだした。
そういえば、ここは梨沙の席だ。
話に夢中で、すっかり忘れてた。
「日曜日、大丈夫だった?」
梨沙は本から福田くんに視線を移した。
「おお。大丈夫。天気も良いらしい」
「やった。じゃあ行けるね」
……なんの、話だろう。
「日曜日の遊園地なんだから、混むこと覚えとけよ」
「うん」
あぁ、そっか。
そうだったじゃん。
「じゃ、俺戻るわ」
「またあとでね」
ここは、高校。
所詮“同じ中学”ってだけ。
“幼馴染みの彼女”にそんなもの敵うわけなかった。
――あたしは静かに教室を出る。
足音も立てずに、誰も人のいないところへ。
どこだったら、一人になれるかな。