ひねくれ双子の険しい恋路


得に梨沙とは何かがあったっていうわけではないけど……今一緒にいたら何を言ってしまうかわからない。


とりあえず、気まずくなるかもしれないけどここを出よう。

問われたら何かしら適当な理由をつけて。


そして一歩、踏み出すと。



「あたし、梨沙じゃないよ」



梨沙と同じ声で同じ顔でそう言ったのは、あたしの目の前にいる人。

『え……?』

「本当。“今は”嘘なんかついてない」


その真顔を見て、あたしの目に映るのは、梨沙じゃないことがわかった。

……そしたら。


『ご、めん……!!』


あたしは、自分のしたことに気付いて慌てて謝った。


梨沙だと思い込んでいたあたしに、砂希は気付いてた。

だから、“梨沙じゃない”っていったんだ。


「大丈夫、慣れてるから」


そう言った砂希の表情から、気持ちを読み取ることはできない。

でも、“間違われること”に慣れるなんて。

あたしは、何て残酷なことをしたんだろう……。



『本当に平気だって。大丈夫じゃないのは麻弥のほうでしょう?』


鋭い、なぁ。


砂希の前では嘘がつけないらしい。




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