ひねくれ双子の険しい恋路


「今誰かと会うと、八つ当たりしそうだから」


だから、ごめん。

一人にして。


『梨沙か……』

砂希の口からハズレは出てこない。


でも。

梨沙と似た顔でズバズバと言い当てられると、やっぱり。


「梨沙の、どこが羨ましい?」

『は?』

「ないの?」

『……ある』

「ちょっと試しに言ってみてよ」


砂希の思考が読めない。

原因の梨沙のいいところを言ったところで、あたしが惨めになるだけなのに。


そう思いながらも、砂希の目が一度もあたしから離れないから仕方なく。

『……美人なところ』

「あとは?」


『頭がいいところ。

強いところ。

福田くんと幼馴染みなこと。

“あの笑顔”を貰えること』



……ほらやっぱりダメだ。


梨沙がどんどん遠くなっていく。

それに比例して、あたしが惨めになっていく。


「朝日と付き合えること。

“あの笑顔”が貰えること。

あたしよりも素直なところ。

幸せなこと」


砂希は、フェンスのところまで歩いていった。

そこに腕をのせて、目の前に広がる町並みを遠く見つめる。


『それって、どういうこと……?』

「少し前のあたし」

振り替えることなく、ふふっと軽い笑みを含んだ砂希。

それじゃあ、砂希も福田くんのこと……?


『今、は?』


「幸せでいてほしい。絶対に別れないでほしい。変わらないで、ほしい」


どうして?

好きだったんじゃないの?

そんなにすぐに気持ちが変わるものなの?


『そんなの、』

「無理?」


あたしの次の言葉を予測して、的中させられた。

あたしは何も、言えなかった。




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