ひねくれ双子の険しい恋路


『――……』


……なるほど。


「一夜?」

『なんでもねーよ。それより、ほら。マフラー戻せ』

「いいんだって。一夜の手暖かいから」

『…………』

「寒いんだから早く帰ろ?」


仕方なく、歩き始めた。

繋いだ砂希の手を、できるだけ包み込むようにぐっと握って。


「なんで寒がりなのに手は暖かいのかな」

『じゃあ何で暗闇嫌いなのに平気っていうのかな』


言われっぱなしは性にあわないから、砂希の口調を真似て言い返してみた。

「いや、平気だし。今日はいきなりだったから少し驚いただけで」

『……おまえさぁ。素直になれよ』

「一夜に言われたくない」


『おい、離れるな。そっち車道だろ』


怒ったのか、手を離そうとしながら俺との距離をとった砂希。

生憎俺は手を離さなかったし距離も縮めた。


「そんなに危機感ない人間じゃない」

『そうじゃねぇよ。俺が嫌なんだよ』


おまえは目離したら何しでかすかわかんねーから。

手を離したらどこか行きそうだから。

砂希の白い肌が、大嫌いな雪と重なるから。



――頼むから、離れていくなよ。

あの時の屋上の時みたいに、手を振り払われるのはもう御免だ。

砂希のあんな顔も嫌だ。


「ねえ……。どこか調子悪いの?顔色よくないけど」

『……大丈夫だって』

砂希の怒っていたはずの表情は、俺を心配している顔になっていた。


……らしくもない。弱気になった。


「本当に?」

『本当』


砂希が調子悪いときは絶対誰にも言わないくせに。



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