ひねくれ双子の険しい恋路


キーンコーンカーンコーン……。


「起立、礼」



日直の掛け声で、授業が終わる。


ここの教室から、みんな元の教室へ帰っていく。


あたしも戻らなきゃ。







――ガラガラ…


教室の入り口から、梨沙が見えた。


『梨沙ー……』


と呼びかけようしたけど、自分の手で口を押さえてやめた。



梨沙は、朝日と話してた。


楽しそうに。


――笑ってる。



上手く席が隣になれたんだね。



あんな梨沙の笑顔見たの、久しぶり…。



『本当の、笑顔だね……』


無意識にこぼれたつぶやきは、誰にも気付かれずに消えた。



きっと、梨沙の笑顔は朝日のおかげだ。



――あ。

まただ。


朝日の、あの表情。


保健室の時と同じ。


梨沙を見守るような、優しい顔……。






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