ひねくれ双子の険しい恋路
『ごめんね、急にー』
「2人してなんの話してたの?」
『うーんと、内緒☆』
梨沙は、不機嫌な顔をした。
そんな顔しなくても、これから分かるから……。
『梨沙』
「ん?」
『ちゃんと言うんだよ、梨沙の気持ち』
「え……砂希?」
『言うって決めたのは梨沙。あたしはそれを手助けしようと思ったの』
「ちょっと、待ってよ!!こ、心の準備が…」
あたしの言葉を理解した梨沙は、急に慌て始めた。
あたしは、梨沙と目をあわせた。
“大丈夫、頑張れ。”
って、伝えたつもり。
……さすが梨沙。
メッセージが伝わったのか、あたしを見つめてうなずいた。
『一夜、行くよ』
あたしは麻生を無理矢理立たせて、屋上の出口へ歩いて行った。
「は?おい、何だよ」
『いいから』
屋上を出る間際に、梨沙の方を振り返った。
だけど、梨沙とは目が合わなかった。
うん、これでいいんだ。
頑張って、梨沙――…。
ガチャン。
屋上の重い扉が閉まって、梨沙は見えなくなった。