【短編】10年越しのバレンタイン
「ここにはよく来られるんですか?」
「ん……いや、」
男性はそこで口ごもる。
私が次の言葉を待っていると、彼は一呼吸おいてから言った。
「実は久々に来たんだ。最後に来たのは高校3年の時、付き合ってた彼女に振られた日で」
男性は大きく伸びをしながら空を仰ぐ。
「しかもその日はバレンタイン。あの時は辛かったなー」
「そう、でしょうね……」
私もここへ初めて来たのは10年前に振られたあの日だから。
なんだか他人ごととは思えないな……。
「それでその日、彼女とよく来たこの公園に来てみたら、俺と同じでバレンタインに振られて泣いてる女の子を見つけてさ」
―――えっ?
私は、思わず耳を疑う。
「なんでもその子、手作りのチョコを好きなヤツに拒否されたんだって。可哀想で、見てられなかったなぁ」
似てる、なんて思い違いかな。