【短編】10年越しのバレンタイン
覚悟の告白
「しかし、こんな偶然ってあるんだなぁ。10年ぶりにここへ来て、キミとまたチョコを食べるなんて」
お兄さんは無邪気な顔でそう言う。
うっ。
偶然……じゃないなんて言ったら、今度こそ信じてもらえなさそう。
「あ、でも10年前と同じ状況って事はもしかして……」
私が返事しそこねていると、何やら一つの結論に至ったらしきお兄さんが口ごもった。
10年前と同じ状況って言うと、
あ、私また失恋でここに来たと思われてる!?
「ごめん、聞いちゃいけない話だよね」
お兄さんが目をそらす。
「あ、あのっ。あの時とは違いますから!まだ!多分!」
私は動揺のあまり、妙な言葉を並べ立てる。
「まだ?多分?」
お兄さんは、訳が分からないといった顔で私の言葉をオウム返しした。