【短編】10年越しのバレンタイン
だって、一応私はお兄さんに渡したくてチョコを作ってたんだし。
まだ振られてもいない。
そもそも告白だってしてないし。
告白……するの!?
「あ、う……」
急に押し寄せた現実に、ついて行けなくなる。
「大丈夫、かい?」
どうしよう。
そう言えば、肝心のチョコももう無い。
お兄さんに食べてはもらえたけど、それこそ偶然の産物だ。
「大丈夫、です」
とりあえず落ち着こう。
私は、何度か深呼吸をして気分を落ち着かせる。
そして、改めてお兄さんに向き直った。
「お話があります。聞いてもらえますか?」
「う、うん」
私は、今日ここに来た訳を話してしまおうと考えた。
この際、洗いざらい言ってしまおう。
もうそれしかないよね。