【短編】10年越しのバレンタイン


私は、お兄さんに全てを話した。


10年前のあのバレンタインから、お兄さんに会いたくて毎年ここに来ていた事を。

もしかしたら、気味悪がられるかもしれない。

けれど、こんなチャンスもう2度とないに違いない。
これを逃したら、お兄さんに想いを伝える事は一生出来ないだろう。



「お兄さん、私ずっとお兄さんの笑顔が忘れられなかったんです」

好きです。

そう想いを込めて、私はお兄さんの目を見た。



「そっか……」

お兄さんはそう言ったっきり、押し黙ってうつむいた。


沈黙が辺りを包む。

風が、ざわざわと木々を撫でて揺らした。

静かな時間は長く感じられて、私は思わず口を開く。

「ごめんなさい、困らせて……」

お兄さんは黙っている。

「もう、こんな事は今年で終わらせます。お兄さんにも、会えたし」



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