【短編】10年越しのバレンタイン
「ふふっ、そうですね」
「でしょ?」
そう言うと、両手を広げて肩をすくめてみせた。
弘樹さんのオーバーリアクションに、私は思わず笑ってしまう。
「ね?―――そこから、始めよう。俺にも、キミを好きになる時間がほしいんだ」
「はい」
弘樹さんが与えてくれた機会。
私は、心がふわりと暖かくなるのを感じた。
「あの時君は小学生で、俺は高校生。けれど今なら、20才と28才の2人だ。堂々と何だって出来るんだしね」
そういった弘樹さんは悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
「これから、よろしくね」
まずは友人として。
そうして関係を始めた私達は、気がつけば俗にいうカレカノの存在へと発展していた。
そして、お付き合いして初めてのバレンタインを迎えた。