【短編】10年越しのバレンタイン
それが10年前の事で、今に至る。
10年の間にも、お兄さんの高校を探そうとしたり、道でバッタリ会ったりしないかなと思ったけど全然ダメだった。
いつしか私は、2月14日にここへ来る様になった。
手作りのチョコを毎年持って。
学校が終わった後だったり、休みの日の1日だったりをこの公園で過ごす。
お兄さんに会いたい一心で。
私はたぶん、お兄さんに恋をした。
あの優しい笑顔と、ふいに見せた真剣な目に。
正直言えば、10年もの長い日々をお兄さんへの思いだけで生きてきたわけじゃない。
年とともに成長するクラスメートや、先輩、他校の生徒などに心が惹かれる事だってあった。
けれど、いつもあのお兄さんの顔が頭をチラついた。
おかげで大学生になった今でも彼氏はいない。