【短編】10年越しのバレンタイン
そして再会?
けれど10年。我ながらよく続くなぁと思う。
姿を見ず、話も出来ない相手。
親友の頼子にも、何度も諦めるように言われた。
「もうさ、『お兄さん』の存在は年月でかなり美化されてると思うよ」
「うん、だろうね」
「他の人にも目を向けた方がいいよ」
「分かってる」
けれどいつもこの調子の私に呆れはてたのか、今ではただ応援してくれるようになった。
本を読むことに集中していると、頼子からメールが来た。
『今年こそ、会えたらいいね』
うん。
会いたいよ。誰よりも。
「でも、小腹すいたかも。寒いし、あったかいものでも買ってこよっと」
私はバッグから財布を取り出すと、自販機の方に移動する。