こんぺいとう【短編集】
神谷 純(かみや じゅん)。
学校で知らない人はいないくらいの有名人だ。もちろん、良い噂は聞かないけど。
ずっと黙視されるこの状況に、どうしていいか分からず戸惑う私。学校一の不良を前にして、下手に動くことも出来ない。
「……あの、」
三回目の呼びかけに彼の口がやっと動いた。
「優等生が、こんな時間に何やってんの」
「えっ、」
「学年トップの市川さんが、夜の10時前にこんなとこで何やってんのって聞いてんの」
おもむろに立ち上がって制服を叩きながら、彼は私の名字を口にした。
正直、その響きにリアルさを感じなかった。彼が私を知ってることが、非現実すぎて理解できない。