こんぺいとう【短編集】
周りに人がいないのをいいことに、“王子”の口調は見る間に荒くなる。
原因は亜月と私の距離がさらに縮まったからか。それとも別の何かか。
「……暑苦しいんだけど」
「だってまた逃げるじゃん」
「逃げないから、離せ」
「しょうがないなぁ」
背中にあった体温が離れて、息吐く間もなく今度は前に引っ張られる。
「行くぞ」
引かれる手は痛いほど強く握られていて、非難の声を上げると少しだけ緩くなった。
「どこ行くのー?」
「お前には関係ないとこ」
「やーらしっ」
「言ってろ、くそ野郎」
「俺も着いてく」
「来んな」
私の思いは完全に無視。
ぐいぐい引っ張られて、結局、いつものように3人での下校。いい加減にしてほしい。