こんぺいとう【短編集】
「怒られたいの?」
頭をぶんぶん振って否定する。
沙希の小さいてに両端を握られたタオルが落ちることはなかった。
俺はぽんぽんと彼女の頭を叩いて、やかんに火を付ける。
「どうしていいか、分かんなくなっちゃって」
「なにが?」
「……同棲、始めたら、あり得ないくらい毎日が幸せで」
その場から一歩も動かずに、徐々に頭だけが下がっていった。
握ってたタオルの端で口元を隠すようにするから、お湯の沸く音に彼女の声がかき消されていく。