こんぺいとう【短編集】
「あ、パンツ見えた」
「…………」
「うそだよ、へんたーい」
「……ちあ、そんなに先輩(俺)をいじめるのが楽しいか」
「うん」
放課後の家庭科室。
出来立ての甘い香りと、先まで使っていた鍋からくゆる温かな湯気。
窓枠に肘をついて外に視線を投げる私の背中に、呆れた……いや、諦めたような先輩のため息。
引き寄せられるように顔だけで振り返ると、シフォンケーキに生クリームを乗せるその人の姿だけを的確に捉えた。
「……見ないの?」
主語のない私の言葉にチラリと上げられた視線。
一瞬、目が合っただけで、ドキリと跳ねる鼓動。……本当、素直すぎて嫌になる。