永遠
ギターを取り出して―・・・
「唄います」
深く深呼吸して歌い始めた。
・・・あたしの気持ち届くかな・・・?
そんな思いを込めて唄った。
・・・何分経ったんだろう。
唄い終わったらけっこう暗くなってた。
「すげぇーじゃん!」
男の人は立ち上がって拍手をしてくれた。
「才能あんじゃね?」
「大げさだよ」
男の人は「そうか?」と納得しきれない声で言った。
あたしはそっと男の人の隣に座った。
「そーいや名前は?」
「・・え?」
「名前」
「・・・光莉」
「いい名前じゃん」
「ありがとう」
「そっちは・・?」
「ん?」
一回通じてなかったっぽいけどそのあと「あぁ」と言った。
「俺は、陽太」
「陽太・・・」
「おう」
「いい名前だね」
「サンキュー」
あたしたちはいっぱい話した。
それで気づいたことがある。
陽太はよく笑う。そして・・・人の目をちゃんと見る。
あたしが陽太をじっと見つめ返すと一回驚いた顔して優しく・・・笑ってくれた。
「そろそろ帰った方がよくね?」
陽太は携帯の時計を見てた。
「うん・・・」
「送ろっか?」
「いいよ。・・じゃばいばい」
あたしは立ち上がって歩こうとした。
「気をつけろよ」
「うん」
あたしは歩き出した。
暗い夜の道を。
・・・歩いて何分経ったんだろう。
いつもより長く感じるのは気のせいかな・・。
いつもより怖いって思うのは気のせいかな・・。
・・そっか、久しぶりに人の笑顔を見てしまったから。
気が狂ったんだ。
あたしは一人クスクス笑いながら歩いた。
あの人はなんであんなに知らない人に・・話そうとするの・・?
あたしは絶対にできない。
見た目で判断するのはいけないけど・・・あの人とは仲良くできないと思ってしまう。
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