SugarⅡ



「あれ、飴がねぇ」



ほんの数秒前までポケットの中に入っていた飴が、いくら探しても見つからない。



移動教室だった授業を終え、教室へ帰ろうと歩いていたときのことだった。飴が、ない。



「落としたんじゃねぇの?」



友達がそう言った。まぁ、そうだろう。多分どこかで落としたんだ。仕方ない。



もともと、クラスの女子に貰ったものだ。毎日、朝登校したら1つくれる。理由は知らないが。



「落としたみたいだな。まぁ、もともと貰ったもんだし、別にいいや。いらねぇ。」



探してまで欲しいものじゃないし。



「ひでぇ男。あいつお前に気があるから毎日飴くれてんじゃねぇの?鈍感男(笑)」



鈍感男?

俺が?


んなわけねぇだろ。



「バーカ、ちげぇよ。飴くれてるだけだろ。俺はそんなに自意識過剰じゃねぇんだよっ」



友達と笑いながら歩いていると、後ろから「…飴…っ」と、息切れした声が聞こえた。



「飴…っ、落としましたよ…!」



女の子の声みたいで、若干遠くから聞こえる。振り向いて辺りを見渡していると…………いた。
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