悪魔的ドクター
「あの時ツラかったのは翔灯も同じなのに、あたしだけ逃げて…彼を独りにしてしまった。だからきっと、今も翔灯はあたしを恨んでる。表には出さないけど…あたしを名前で呼ぶのも、小さな抵抗なんじゃないのかしら」



『そんな事ない』なんて
何も知らないあたしが
軽はずみに言えるはずがない。

『嫌いになったらダメ』だなんて偉そうな事は言えない。

自分が恨んでいるのに…
人に説教は出来ないから。

だけどきっと
先生は椿さんを恨んでなんかないよ。


そう信じたいだけなのしれないけど、そうであってほしいとは思うんだ。



「あ、ごめんなさい!こんな話されても困るわよね。あたし何勝手に話してるのかしら…」


「いえ。嬉しかったです。先生の事も知れたので。それになんとなく…椿さんの気持ちもわかった気がします」


「咲桜ちゃん…」



環境も状況も違うけど
椿さんと自分が
ちょっと被った。

きっと椿さんは
今まで誰にも何も言わずに
1人で後悔してきたんだと思う。


『姉らしくなかった』
と言った彼女は

ちゃんと"姉"の顔をしていた。


やっぱり姉弟なんだね…





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