悪魔的ドクター
「本当、可愛くない弟だわ」


「昨日と言ってる事が違うなぁ。『カワイイ弟』に会いに来たんじゃなかったっけ?」


「撤回!"カワイイ咲桜ちゃん"に会いに来たの!!」


「調子いい姉だ」



先生は悪戯に笑い
椿さんを苛める。

その光景が微笑ましく見えるのはきっと…あたしだけだと思う。



「そろそろ行くわね?」


「駅まで送ってく」


「平気。タクシー待たせているしね」


「…わかった」


「あ、咲桜ちゃん!」


「は、はいッ」



姉弟の話を、ちょっと離れた位置で聞いていたあたしは、椿さんに手招きで呼ばれ、近寄った。



「こんな弟だけど、翔灯の事、宜しくお願いします」



そう言って椿さんに頭を下げられてしまった。



「あ、頭を上げて下さい!宜しくだなんて、それはあたしのセリフですッ!!」


「まったく、その通りだ」



先生
フォローなし…。



「翔灯。咲桜ちゃんを大切にしなさい!」


「…あぁ。わかってる」


「え…」



先生…
大切に…してくれるなんて…
ちょっと嬉し…



「大事な患者だからな。死なせる訳にはいかない」



…そっちね。




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