悪魔的ドクター
「どうして!?私はずっと翔灯を愛してたんだよ!?ずっと忘れなかったのにッ」



それは俺も同じだ。
すぐには忘れられなかった。


愛していたから…。



しかし。
希望が絶望に変わった時…
今までの綺麗な思い出も
これからの2人の未来も全て失った事に、ようやく理解出来たから俺は前に進んだんだ。


"捨てられた"という現実を
受け入れたんだ。


だから今はもう…
想う事が出来ない。



「1度失った気持ちは、戻らないんだ」


「そんな…ッ。あんなに幸せだったのにッ」



その幸せを奪われたんだ。



「…悪い、な」



ずっと
記憶から消す事ばかり考えて
暖かい思い出に浸れる余裕がなかったんだ…。

きっとそれは
今も同じだ。



「そんなに…あの娘がいいの?」



柚花は急に怖い顔をし
呟く様に聞いてきた。



「あの娘…?」


「姫宮咲桜」



俺は一瞬驚いた。

どうして柚花が
咲桜ちゃんの名前を知っていたのか。

だがすぐ思い出した。

柚花と咲桜ちゃんは
1度マンションで会っていたという事に。


きっとそこで自己紹介でもしたんだろう。




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