悪魔的ドクター
それから…



あたしは
どうしたんだろうか。


どんな顔をしているんだろうか。






力なくマンションに入り
荷物を全てまとめながら
ふと、カレンダーを眺め
今までの事を思い出す。





先生の家に来て
もう半年が経ったんだ…。





ほとんど意識した事がなかった。




"患者"という立場で
入院していただけなのに…

"楽しかった"と
思ってしまう。




でもそれも
もう終わり。




白石さんには散々言われ

先生は白石さんの元へと出ていってしまい…


あたしは
大切な人を失った。




その現実は
想像以上に苦しかった。






溢れるのは
涙と…
"好き"という感情。





どちらも拭い去らないといけないのに、自分の意思とは関係なく溢れる想いは、止める事が出来なかった。






まとめた荷物を持ち
ゆっくりとリビングへと向かう。



そして。
借りていたカードキーと
"さようなら"と書いた手紙を置いた。




2年前…

白石さんも
こんな苦しい気持ちで
手紙と合鍵を残して
先生の前から姿を消したのだろうか…


そう思うと
複雑だった。



「先生…ありがとう」



感謝を込めて、一礼し
あたしはマンションを離れた。




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