悪魔的ドクター
咲桜ちゃん…ではなかった。
「翔灯…?」
うずくまっていたのは
柚花だった。
正直
咲桜ちゃんじゃなくて安心した。
だがそれと同時に
ふと思う。
『なぜ咲桜ちゃんだと思った?』
"俺の帰りを待っていた"
そんな調子いい事を
俺は勝手に考えていたのか?
何してんだ…自分は。
「おかえり、翔灯」
柚花は
フラフラと立ち上がり
扉で体を支えているが
足元がおぼつかない。
酒の匂いがする。
「…飲んでいるのか?」
「少しね…」
まともに立てないほど飲んでいて"少し"のはずがない。
「こんな所で何してたんだ?」
「翔灯を待っていたの」
「…中、入れ」
まさかこんな所に放置する訳にもいかず、仕方なく彼女を部屋に入れる事にした。
扉を開ける為
柚花に離れる様に伝えるが…
「翔灯…私と結婚して?」
そんな事を言い出す。
こんな所でやめてくれ。
「とにかく中に入れ。寝て酒を抜け。話は明日聞くから」
「今がいいのッ!!」
まるで子供の様に駄々を捏ねる。