悪魔的ドクター
はぁ…
まったく。



一向に退こうとしない為
俺は扉を開けるのを諦めて
柚花と向き合う。



「なぁ、柚花?」


「…何?」


「本当の事を話せ」


「え…?」


「傷の事だ」



唐突な発言に
柚花は視線を外して首を傾げた。


とぼけているな。



「真実を知りたいんだ」


「だからそれは…」


「お前の口から、本当の事を聞きたい」



一瞬こちらを見た柚花に
目を合わせて伝えるが
すぐにまた視線を外された。


だが
俺の言いたい事は理解した様だ。


彼女はそのまま
俯き加減に唇を噛み締め
告白した。



「背中の傷は…自分で付けたの」



ようやく聞けた真実は
母親の言った通りのものだった。



「前の夫にされたものなんて…嘘なの」


「あぁ…」


「本当は…結婚も、してない」


「…そうか」


「…驚かないの?」


「…あぁ」



俺の頭は
意外にも冷静だった。


全て聞いていたからか?

それとも
気付いていたからか…。



もしこれを
初めから柚花の口から直接聞いていたら、また違っていたのかもしれない。





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