悪魔的ドクター
「気付いていたの?」


「まぁ、そんな所だ」


「そう…なんだ」



柚花はバツが悪そうに
また俯いた。



「どうしてウソついたんだ?」


「こうでもしないと、翔灯の側にいられないと思ったから…」


「"助けて"と言ったのは?」



あれもまさか…



「全部ウソ…」



俺は
衝撃を受けた。


落胆もした。


まさかこんな事でウソつかれるとは思わなかった…。



「だ、だけどねッ!好きって気持ちは本当なのッ」



柚花は
必死に"想い"を伝えようとした。



だが…



「今さら勝手な事を言うな」



聞きたくない。




俺は少し苛立ち始めていた。


先に出て行ったのは柚花だ。

いきなり戻ってきて
ウソまでつき
まだ俺を好きだと言われても
嬉しいはずもない。



「どんな理由にしろ、こんなウソはつくな。誰も良い気分はしないんだ」



ウソをついた柚花も
何も知らない母親も
そして俺自身も…

誰も何も得ない。



「翔灯…」


「もう…家に帰れ」



柚花の顔を見ず
言葉を吐き捨て
俺は部屋に戻った。



もう何も
関わりたくない。


酷い言い方をすれば
相手にするつもりも
なかった。





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