悪魔的ドクター
気付けば
夜の9時をまわっている。


外はもう暗く
部屋の中も灯りがない。


咲桜ちゃんがいる気配もなく
玄関には靴も見当たらなかった。




留守か?



『きっとどこかに出掛けているんだろ』と、あまり深くは考えていなかった。


置き手紙を見るまでは…。






いつも通り
ネクタイを外しながらリビングの電気をつけた。



ソファに近付くと
テーブルに白い封筒と
カードキーが置いてあるのに気が付いた。



よく見れば
封筒には
"速水先生へ"
と記されている。



「え…」



咲桜ちゃんからの…手紙?




胸騒ぎがした。

1年前
柚花が出ていった時と
似ていたから。





逸る気持ちと
必死に落ち着こうとする心の狭間で、封を開けた。





『速水先生へ


黙って出ていく事を
お許しください。


先生と白石さんの間に
あたしは邪魔でしかありません。

だからもう
これ以上先生の家でお世話になる事は出来ません。



今までたくさん助けて頂いて
本当に嬉しかった。

独りじゃなかった。


白石さんと
幸せになってください…



姫宮咲桜より』






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