悪魔的ドクター
「…わかってます」
「わかってるならッ」
「でもッ…出来ないんです…」
言いたい事はわかってる。
『あれだけ言ったのに、まだわかんないのか』って
きっと思ってる。
あたしの状態も
『拒否出来ない』この状況も
ちゃんと理解してる。
だけど…
どうしても
それはしたくない。
「…ッ」
先生は何か言いたげだったが
口をつぐんでしまった。
呆れられたのか
見捨てられるのか
怖くて
先生の目が見れない。
けれど
先生は…
「…わかった」
穏やかな口調で言いながら
あたしの頭を優しくポンポンと叩いた。
「えッ」
その言葉と仕草に驚いたあたしは
パッと顔を上げ
先生と目を合わせた。
「自宅療養だな…。薬出しとくけど毎日通院しろ。わかった?」
「入院しなくていいんですか?」
「仕方ないだろ?両親と連絡が取れないんだから」
言葉は違うけど
ハッキリと、あたしのせいだと言われた気がする。
「すみません…」
「まぁとにかく、もう少し具合が落ち着いたら帰って寝ろ」
「はい…」
微かに呟くと
先生はあたしの顔を見つめたまま
数秒動かない。
不思議そうに首を傾げると
『いや、なんでも』
そう言って先生は
病室を出て行った。