悪魔的ドクター
「喘鳴は聞こえないけど…呼吸は浅いな。まだ苦しい?」


「少し…コホッ」


「わかった…。病院行くよ?」



聴診器を外した先生は
あたしの体を支えながら
立たせてくれた。


明日はまた大学があるし
今から病院に行ったら
何時に帰って来られるかわからない。

本当は断りたい所だけど
発作が酷くなっても困るし
速水先生は断ってもムダだとはわかってる。

だから素直に従った。




駐車場に停めてある先生の車。
さすが医者。
BMWだもん、金持ちの証拠。


高級車に緊張しながら助手席に乗り込むと、仄かに香る甘い芳香剤が鼻を掠める。

車内は黒が基調でシンプル。
余計な物は何1つ置いてない。



「近くの病院にするか…」


「…速水先生の所がいいです」



先生の病院の方が安心する。
先生が安心するんだ。



先生と2人きりの
短いドライブが始まった。


発作があるはずなのに
それ以上にあたし…緊張してる。

先生の車だから?


そんな事言ってられる余裕があるから可笑しいよね。





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