悪魔的ドクター
「先生どうしてこんなに早く来れたんですか?病院からここまで30分は掛かるはず…」
「あ〜。ちょっと所用でこっちまで来てたんだ」
あ、だから早かったのか。
納得。
「偶然こっち来てて良かった。個人情報の持ち出しも悪くなかったって事だし…」
「なんの事ですか?」
「…なんでもない、こっちの話。それより、そんだけ話せるなら大丈夫そうだな」
確かに。
吸入器のおかげか
咳は一先ず治まった。
ただ、まだ胸の圧迫はある。
「咳は治まりました。だけどまだなんか変…」
「発作自体が治まった訳ではないから、油断するなよ?」
喘息の発作って
なんか色々大変…。
ちょっとの刺激で
咳がまた出そうだし。
窓の外の真っ暗な景色を
ボーッと眺めていると
車の揺れで少しずつ睡魔に襲われ始めた。
「もし眠れるなら少し寝た方がいい。着いたら起こす」
先生は気付いたらしく
気遣ってくれる。
だけど
こんな密室空間で
先生の隣で眠るなんて…
そうは言っても
睡魔には勝てなかったみたい。
いつの間にか
目を閉じていた…