悪魔的ドクター

『どうかしたんですか?』


「あ、いや。発作起こしてないか確認の電話だ」


『大丈夫ですよ?』


「まぁ…それならいいんだけど」



なんだ?
なんか…
緊張してるぞ、俺が!


いやいや
おかしいだろ。


【相手は未成年】
【相手は患者】

まるで呪文の様に
俺は心の中で言い聞かせた。



『先生?』


「ん?」


『先生こそ…大丈夫?』


「え?」



いきなり大丈夫かと聞かれたが
何が大丈夫なのか、俺にはよくわからなかった。


それに
電話の向こうの咲桜ちゃんの声に元気がない。



「急にどうした?」


『…あまりムリ…しないでください』



彼女はもしかして
俺を心配してるのか。


患者に心配される様だったら
俺もダメだな。


だけど
咲桜ちゃんは優しい。


そんな娘だから
放っておけないんだよな…



「ありがとう、咲桜ちゃん」


『お礼言われる様な事はしてないですよ?』



してるよ。

20代後半の独りもんは
誰も心配してくれる人なんていないんだから。


こういう温かい言葉は
癒されるよ。



…完全にオヤジだな。




心配して電話したのに
返って心配されてしまったのは情けないが、無事で何よりだ。



そんな事を考えながら
電話を切った。



――……速水side END *。+†*



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