とある烏の物語
また泣きそうな蚊の泣くような声で少女はいいました。

それでも少女は顔を上げ泣きながらぎこちなく微笑みました。

「わかったわ。さよならからすさん。今までありがとう。あなたが教えてくれた海のお話はどれもとても面白かったわ。」

少女の青い瞳から流れ落ちた雫が碧いからすの体に当たって弾けました。

雫を太陽に反射させてキラキラ輝く様子は本当に海のようでした。

『それでは私はもう行かなければいけません。
…さよなら。お元気で。』

そう言うと海色の翼をめいいっぱいひろげ青い空に力強く羽ばたいていきました。

少女はからすが地平線に消えるまでいつまでも空を見ていました。


からすを見送った後、ふとからすがいつもとまっていた窓際を見ると何か落ちているのを見つけました。

それは碧色の美しいからすの羽でした。

少女はその羽をそっと拾うと水を弾き輝く様子を見たかったのか水の入った小さな小びんに入れました。
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