とある烏の物語
少女は驚いて言いました

「まぁ。鳥さんが喋ったわ。しかもからすですって。こんな真っ白なからすなんて見たことも聞いたこともないわ。」

それを聞いてからすはいいました。

『あなたの瞳は青いでしょう。でも黒い瞳の人もいる。からすもおなじように私みたいな白いものもいるのですよ。』

まぁ素敵。

少女は少しうっとりした様子でそう いいました。

からすはずっと聞こうとしていたことを聞いてみることにしました。

『お嬢さん、お嬢さん。
どうしてこの家は全て青いのですか?』

その質問に少女は嬉しそうに答えました。

「それはね、私が青い色が好きだからよ、からすさん。」

しかし少し悲しそうな顔をして少女はいいました。

「でもね。みんなに〈一番綺麗な青い物は何かしら?〉ときくとみんなは〈もちろんそれは海ですよ。〉というの。
でも…私は《海》というものを見たことがないの。
私はこの家から出てはいけないと言われているから。」

そして少女はいいました。
「からすさん、からすさん。《海》のお話をしてくれない?《海》がどんなものなのか知りたいの。」
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